肥後系(熊本花菖蒲)


「満月の宴」(まんげつのうたげ):名古屋市在住の光田義男氏によって作出された、純白八重の極大輪花。花弁が波打ち、大輪の花に豪華さを増す。


 江戸時代末期の天保から弘化、嘉永年間にかけて、肥後藩主の細川斉護公が江戸の松平菖翁より花菖蒲を譲り受け、藩士の間にその栽培・育種を奨励し、室内鑑賞(鉢植え)を対象に育種をきそい合い、驚くべき発達をとげたのが、熊本花菖蒲です。

 この系統は門外不出という満月会の掟のため、広く一般に知られるようになったのは昭和に入ってからのことですが、その後の浸透はめざましく、戦後は花菖蒲の主流を占めるまでになりました。


肥後系の特色

 大輪で堂々とした風格に特徴があります。本来は室内鑑賞を目的として改良されてきた系統で、豪華さのなかにゆるぎない品格を兼ね備えており、鉢で栽培して室内で鑑賞してこそ本来の美しさに触れることが出来ます。
 反面、露地栽培では大輪の花が風雨に弱く群生美にかけ、繁殖も江戸花菖蒲にくらべやや劣る品種もあるなどの欠点があります。最近ではそれらの短所を大幅に改善した優秀花が作り出されていますが、やはり本来は一輪の花を室内でじっくりと観賞したい系統です。
 また、江戸系や伊勢系など他系統との交配も進み、とても豪華なピンクの色彩を持つものや脈入り花など、多彩な品種も作出され、一層華やかになりました。


肥後系独特の花容表現
正 花(せいか)
 本花(ほんか)とも言います。これは、花容が整然と整っており、花弁がよれたり、波打つなどの癖がなく、雄雌の蕊も整っており、異様な咲き方をしないことを言います。代表的な品種に「玉洞」、「石 橋」などがあります。

働きのある正花(はたらきのあるせいか)
 雄雌の蕊は整然と整った形をしているが、花弁がさまざまな変化のあるものを、働きのある正花と言います。

働 花(はたらきばな)
 正花と異なり、花弁に変化のあるものを言い、花弁に凹凸があり、また変形の弁となり、花弁が互いに重なり合ったりしているものです。代表的な品種としては、「西行桜」「滝の瓔珞」などがあります。これらの花容表現は、肥後系が発達した熊本で出来たものですが、今日一般には殆ど使われなくなりました。


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