ノハナショウブ

学名:Iris.ensata v.spontanea


 青森県下北郡尻屋崎に自生するノハナショウブ。98年7月5日撮影。潮風の吹付ける岬の湿原に自生していた。黄色い花はニッコウキスゲ。


 北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、シベリア東部に分布する多年草で、山野の草原や湿地に生える。地下茎は分岐し横に這い、褐色の多くの繊維に包まれる。葉は偏平な線形で全緑、直立して30〜60pになる。花茎は直立して高さ40〜100p、2〜3個のほうを付け、時に分枝する。開花は6〜7月。直径10p程の赤紫または青紫の花を咲かせる。

 今日見られる多彩な園芸品種のもとになった、花菖蒲の原種です。昔は日本各地の原野に広く自生していましたが、最近は殆ど見られなくなりました。北海道や東北地方では、まだ平地で自生が確認されますが、関東以西の平地では自然保護区域など特別な場所でないと見られないようです。私は、信州や富士山周辺の高原の自生地へ、この花を見によく出かけます。
 
 花色は全国的に見ると赤紫色が一般的で、日本以外の例えばロシア極東部の花も赤紫色ですが、地域的に青紫の花の咲く場所や、両方の花が自生する地域があります。私の知る限り富士山や箱根周辺の花は青紫系で、そこから近い山梨や長野の自生地では赤青両タイプが見られ、株ごとに微妙に色彩の変化が見られます。また、三重県の天然記念物「ドンドバナ」も青紫系です。しかし、なぜこのように地域的に花色の変化があるのかわかっていません。
 草姿も生息地域によってある程度の違いが見られるようで、東北や北海道に自生するものは比較的大柄なのに対し、関東以西、特に富士山周辺に自生するものは、細葉で花も小輪です。

 また、東北地方には、今日でも花色などに変化のある野生種が自生しており、長井古種のような、江戸花菖蒲古花より更に古いタイプの花も東北地方に散見されることなどから、花菖蒲発達の起源は、東北地方に自生するノハナショウブの色変わりがもとになっているのではないかとも考えられています。


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