花 菖 蒲 番 付


 これは明治時代に、現在の東京都葛飾区堀切にあった花菖蒲園の一つで、武蔵園という花菖蒲園がが発行した花菖蒲の番付です。たて38センチ、よこ28センチの薄い和紙に、ちょうど相撲の番付のように、花菖蒲の品種名がならべられています。
 
 この番付には全部で190品種くらいが記載されていますが、このなかに見られる品種のうち、こんにちまで残っているものはおよそ40品種程度です。
 行司には菖翁花の「宇 宙」を配し、「霓裳羽衣」、「立田川」、「昇り龍」など、こんにちでも評判の高い菖翁花が続きます。また、「座間の森」、「武蔵川」、「笑楽遊」、「遊女の姿」など、名前もその花容も優美な江戸の名花が名をつらねています。

 武蔵園は小高園と同じく、江戸時代末期から開園した花菖蒲園の老舗ですが、いつ開園したのかは不明です。武蔵園の花菖蒲に関する資料としては、この番付のほか『花菖蒲図譜(武蔵屋瀧蔵編)』が、京都大学に残されています。

 堀切ではその昔、この武蔵園のほか小高園、吉野園、観花園、堀切園など、多くの花菖蒲園が狭い範囲に集中して開園していました。そして各園独自に趣向をこらし、各園独自に新花を作出し、客を引き付けていました。花菖蒲の番付も、このほかにも小高園のもの、堀切園のものなどが残されています。
 これら堀切にかつて見られた花菖蒲園は、太平洋戦争前までに殆ど閉園し、現在では堀切園を区が買収して都市公園として開園した「葛飾区立堀切菖蒲園」が、かろうじて昔日の堀切の名残をとどめています。


inserted by FC2 system